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生きることが光になる〜糸賀一雄生誕100年〜(びわ湖放送「県政週刊プラスワン」より)

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生きることが光になる〜糸賀一雄生誕100年〜

糸賀一雄さん。戦後まもなくの1946年、知的障害のある子どもたちの教育と生活と療育の場である児童施設「近江学園」をつくるなど、障害のある人たちに対する理解が乏しく、福祉制度が十分整っていなかった時代に、先駆的な実践を進めた「障害福祉の父」と言われています。

残した言葉の一つが、「この子らを世の光に」。障害のある子どもへの支援を通じて、社会のあり方や人が「ありのままに存在すること」 の価値、「生きること」の意味を問いかけた言葉です。

その思い、取り組みは、私たちが生きる現代にも通じています。 来年3月に糸賀一雄さんの生誕100年を迎えます。この機会に、滋賀県では糸賀一雄さんの取組みと思いを、広く県民の皆様に伝え、未来へ受け継いでいくため、記念事業が実施されています。テーマは「生きることが光になる」。

県政週刊プラスワン、今回は糸賀一雄さんにスポットを当て、糸賀さんが目指した共生社会について考えます。

糸賀一雄生誕100年と共生社会の実現

毛利聡子

(「県政週刊プラスワン」キャスター)滋賀の福祉の基礎を築き、「この子らを世の光に」という言葉を残された糸賀一雄さん。 2014年は糸賀さんが生誕して100年目の年になるんですよね。

中倉真梨子

(「県政週刊プラスワン」アシスタント)「この子らに世の光を」ではなくて、「この子らを世の光に」なんですね。「に」と「を」 が入れ替わるだけで、全く違う意味になりますね。

毛利聡子

この言葉は、「生きること」の素晴らしさや命を大切にする尊さを、今の私たちにも教えてくれているのではないでしょうか。

中倉真梨子

ゲストをお迎えしております。滋賀県障害福祉課の奥山光一さんです。よろしくお願いします。

奥山光一

よろしくお願いいたします。

毛利聡子

先ほど、糸賀一雄さんの言葉を紹介したんですけれども、県民の皆様の中には糸賀さんのことをご存じない方もいらっしゃると思いますので、もう少し詳しく糸賀一雄さんについてご紹介いただけますか?

奥山光一

はい。糸賀さんについては、先ほど「障害福祉の父」というようなご紹介がありましたけれども、知的障害のある子どもの施設である「近江学園」でありますとか、西日本で最初の、重い障害をもった子どもたちの施設「びわこ学園」をつくられました。それ以外にも、国の審議会の委員として、国の制度づくりにも尽力されました。

毛利聡子

ということは、滋賀県だけでなく、日本の障害福祉の基礎づくりにも大きな業績を残されたということなんですね。

奥山光一

糸賀さんは、そうした取り組みを通じまして、重い障害のある子どもたちでも立派に自己実現ができる存在であるということを認めあえる社会づくりを目指して、力を注がれました。

毛利聡子

障害のあるなしに関わらず、お互いがその人らしさを尊重し合いながら、ともに生きる、という社会を目指されたということなんですね。

奥山光一

はい、そうですね。現在では、そうした社会を「共生社会」 と呼んでおりますけれども、滋賀県では、糸賀一雄さんが生まれてから100年の節目の年に、「共生社会」を県民の皆さんと一緒に考えるきっかけにしたいと思っています。

中倉真梨子

なるほど。では、「共生社会」とは具体的にどういうことなのでしょうか。その実現につながる取り組みをいくつかご紹介していきます。

地域でつながるスポーツフェスタ2013

11月9日(土)。草津市にある滋賀県立障害者福祉センターで 「地域でつながるスポーツフェスタ2013」が行われました。このスポーツフェスタは、障害のある人たちが身近な地域でスポーツができる環境づくりを進めることや、障害のある人とない人がスポーツを通じて交流し、お互いに理解を深める場として開かれました。

(滋賀県障害者スポーツ協会 理事・太田千恵子さんの話)「滋賀県にも障害者スポーツを少しでもみんなに知ってもらいたい。今は知ってもらって地域の中で私たちがみんなと一緒にできるスポーツをやっていけたらいいなというのが私のきっかけです」

スポーツフェスタは、障害者スポーツ関係者だけでなく、総合型地域スポーツクラブやスポーツ推進員の関係者なども協力し、この日を迎えました。

(滋賀県総合型地域スポーツクラブ連絡協議会 会長・大原克彦さんの話)「いつでもどこでもだれでもが楽しくスポーツができるというのが、総合型地域スポーツクラブの根本のコンセンサスなんですね。障害のある人もない人もと書かなくても、そういう壁をぜんぶ除いたような教室を作っていきたい。楽しく人生を過ごせるひとつの糧としてこういうクラブを利用していただきたい、ということで今回このプロジェクトに参加させていただきました」

スポーツフェスタでは数多くのスポーツ競技が行われました。こちらは「ボッチャ」という競技です。的となるボールにカラーボールを投げて、どれだけ近い位置に投げることが出来るかを競います。この競技の特徴は、たとえボールを投げることが出来なくても、ボールを転がす道具をつかうことで投球が可能なところです。障害のある人もない人も一緒に楽しんでいました。

(滋賀県障害者スポーツ協会 理事・太田千恵子さんの話)「障害者スポーツという分野にとらわれずどんな障害があってもスポーツというのは楽しむことが出来ると思うので、地域の中で障害のある人も一緒にスポ ーツが出来る環境づくりを一緒にやれたらいいなというのが私の目標です」

毛利聡子

ほんとうにみなさん、楽しそうに汗を流していらっしゃいましたね。一口に障害者スポーツといってもいろいろあるんですね。

中倉真梨子

そうですね。映っていた「ボッチャ」もそうですし、風船のバレーボールなんかも、子どもたちもたくさん交えてやっていて、誰もが気軽に参加できるような競技が多かったですよね。

毛利聡子

そうですね。お子さんからお年寄りの方まで楽しんでいらっしゃいました。「ボッチャ」はパラリンピックの正式種目にもなっているということで、こういうスポーツをもっともっと皆さんに親しんでもらいたいですよね。

奥山光一

そうですね。障害者スポーツといいますのは、障害のある方でも楽しめるように一般の競技のルールを工夫したりして実施されているものもあります。例えば車椅子バスケットボールなんかですと、障害のない方が練習に参加したりして、一緒に楽しんでおられるといったようなことも聞いております。障害者スポーツというのは、お互いを理解するうえで非常に大きな役割があるんじゃないかと思います。

毛利聡子

なるほど、一緒にスポーツをすることで、お互いのことが理解しあえるという点もありますもんね。

奥山光一

そうですね。今回のスポーツフェスタでは、参加者の皆さんにできるだけ多くの障害者スポーツを体験してもらって、楽しさを知ってもらえるように運営を工夫しました。このイベントを機会に、スポーツをやってみようと思ってくださる障害者の方が増えていくことを期待しています。

また、障害のある人とない人がともに楽しみ、交流できるのがスポーツだと思います。今回のイベントでは、準備の段階から地域のスポーツクラブやスポーツ推進員の方にも関わってもらって、障害者スポーツ関係者と一緒にイベントの内容を計画してまいりました。障害のある方とない方がスポーツを通じてお互いに理解を深めることができる取り組みが、それぞれの地域で広まっていくことを期待したいと思います。

毛利聡子

本当にそうですよね。今回は地域の人たちもこのイベントに積極的に参加されたということなんですね。こういった活動が色んな地域にもっともっと広がっていくといいですよね。

中倉真梨子

さて、スポーツに続いては、芸術を通して、ともに生きる社会を考える取り組みをご紹介します。

第3回ぴかっtoアート展〜それぞれのカタチ〜

12月15日(日)まで、イオンモール草津のイオンホールで「第3回ぴかっtoアート展〜それぞれのカタチ〜」が開催されています。

(「ぴかっtoアート展」名前に込められた想いは?…公益社団法人滋賀県手をつなぐ育成会 理事長・崎山美智子さんの話)「ひらがながあり、カタカナがあり、漢字があり、アルファベットがあり、一つ一つの作品のなかの作者の思いも個々様々ですので、その思いを表すというところで、こういう面白いネーミングになったんですけれども、一つにもやっぱり糸賀一雄先生の思いである『この子らを世の光に』の『光』というイメージも、この中に表されているということで」

この展覧会は、滋賀県の障害のある人を対象に作品が募集され、その中から選ばれた作品が展示されています。それぞれの作家の心のカタチを表現した作品は、見ているだけでワクワクするような素敵な作品ばかりです。

(公益社団法人滋賀県手をつなぐ育成会 理事長・崎山美智子さんの話)「ひとりひとり、個々いろんな想いがあって作品をつくられていると思いますので、障害のある人もない人もみんなに理解していただきたいという思いを、来ていただいた方に感じていただき、『ぴかっ to』光った命の輝きのようなものを感じていただきたいなって思っております」

どの作品にも自分を表現することの喜びが感じられ、その色使いの美しさや発想力の豊かさは、見る人の心を揺さぶります。

(「ぴかっtoアート展」作品の感想は?…来場者の話)「上手い下手とかはよく分からないんですが、一生懸命描かれたんやろなぁというのが伝わってきて、すごいなと思います」「すごく創造性があって、色使いなんかも素晴らしいですし、驚きました」「こんな細かいことがよくできるなぁという感じ。すごいなぁと思って。感性が全然違うなぁと思って」「発想とかが、普段私の感じないもので表現されていて、すごい良かったと思います」「今日(イオンモールに)来てこういうことをやっているのを知らなかったので、ちょっと感動しました。良かったと思います」

障害のある人もない人もアートを通じて、お互いに感じあうことができるのが「ぴかっtoアート展」。多くの人に障害のある人たちの作品の魅力を知っていただく良い機会ではないでしょうか。

毛利聡子

どの作品もすぅーっと吸い込まれていきそうな作品でしたね。

中倉真梨子

そうでしたね。発想や色使いがその人にしか表現できない、真似できないという作品が多いような気がして、まさに個性だなと思いましたね。

毛利聡子

そうでしたね。芸術は自分の内から湧き出してくる気持ちが、ほとばしる感情を心のまま、ありのままに表現するものなんだなというのが、よく分かりましたね。

中倉真梨子

みなさんそのありのままの思いを作品にして人を感動させたりして、障害のあるなしって本当に関係ないんだなって思いますよね。こうしたアートを通じて、すべての人がお互いの違いを認め合って、自分らしく生きていける社会を考えるきっかけになるといいですよね。

奥山光一

こういった造形活動は戦後、糸賀一雄さんたちが設立した近江学園での粘土を利用した造形活動が始まりといわれております。それが子どもたちの人格形成に大きな役割を果たすということで、その後、県内の福祉施設に広まっていったと聞いております。最近では色んなところで色んな作品展が開催されておりますし、障害のある方の作品が人の目に触れる機会も多くなってきていると思っています。そういった作品を通じまして、障害のある方への理解が深まっていくことを期待しておりますし、その作品を通じてその人の持つ可能性なんかも感じていただければと思っております。

毛利聡子

先ほどのインタビューでも、気軽に立ち寄って「あ、こういうのがあった」って知らなかったという方もいらっしゃっいましたけれども。本当に身近にあるこういった展覧会に、どんどん足を運んでいただきたいですよね。また最近ではアール・ブリュットという芸術分野も注目されていますしね。

中倉真梨子

そして糸賀一雄生誕100年記念事業の一環としまして、県内各地で「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり」をテーマにワークショップが開かれています。その一つを取材していますのでご覧ください。

「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり」ワークショップ

12月1日には、甲賀地域で障がい者福祉を考えるつどいとして行われ、多くの人が参加しました。

(どういったことに気づき考えて欲しいですか?…社会福祉法人さわらび福祉会 支援センターこのゆびとまれ 副所長 池田章人さんの話)「日々私たちの地域の生活のなかで、障がいをお持ちの方が置かれている状況が色んな意味で生きにくさ、暮らしにくさみたいなものはたくさんあると思うんですけれども、とはいえなかなか暮らしにくさというところに気付くっていう機会はあまりないのかなと思います。今回つどいの場を通して、当事者の方であったりとか、障がいをお持ちのご家族の方と意見交換していただくなかで、こういったところが暮らしにくさがあるんやっていうところのきっかけにしてもらえたら、すごく有難いなと思ってます」

つどいでは、コンピューターやインターネットなどのICTを駆使して、ユニバーサル社会の実現を目指している、社会福祉法人プロップステーションの理事長 竹中ナミさんが講演をし、地域社会における障がい理解、障がいのある人の就労について話しました。

(社会福祉法人プロップステーション 理事長 竹中ナミさんの話)「自分たちは色んな人の手助けで生きています。手助けがなければ生きていけません。『それはとっても有難いことだと思っているけれど、手助けを受けるだけで生きていくっていうのは、実は苦しいこと。自分が誰かに喜びを与えたり、あんたに期待するで、なんか一生に一回も言ってもらうことのない人生なんて、考えたことありますか』って言われたんです。『自分もあんたがおってよかった、あんたが私のためにこれしてくれて嬉しいわ、こんなことちょっと悪いけどしてくれへんか、って言われたい。その一番身近な目標は働くこと』」

重い障がいのある人たちへの就労支援の経験から、人のマイナス部分ではなく、可能性に着目し、それを引き出す行動を起こすことが大切であり、課題解決の力はひとりひとりの中にある、と語りました。

(「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり」を進めていくためには?…参加者の話)「障がいは、困ったことでもなんでもないんですよ。不便でも不幸でも何でもないんだよ。今日先生がおっしゃってました。『能力を引き出すことさえできれば…常識は変えられる』」

講演会の後は、5つのグループにわかれ、地域での障がい理解の現状や、障がいのあるなしに関わらず、誰もが暮らしやすい地域社会を築いていくためにはどうすればよいか、などが話し合われました。

(「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり」を進めていくためには?…参加者の話)「私たち障がい者というのは、知ってもらうことは怖がっていません。何も遠慮しないで、手どうしたんやとか、障がいどうされたんやとか、素直にしていただけたら有難いと思っていますので、どんどんこういうつどいには参加したいと思います。各地で障がい者を交えたイベントとかこれからありますけど、どうしても健常者の方の参加が少ないんですね。当事者からもどんどん発信していって、まず自分の家族とか、友達とか地域の人たちに声かけをしていきながら、参加を増やしていけたらいいなと思います」

障がいのある人、ない人が、それぞれに感じていることや思っていることをお互いに知ることが、共生社会に近づく第一歩になるのではないでしょうか。

毛利聡子

「誰もが暮らしやすい福祉しがづくり」を進めていくためには、こうしたお互いの考えを話し合って、身近に障がいを知り、理解を促すこういった機会が、継続的に行われていくというのが、今後期待されるところですよね。

中倉真梨子

地域で声をかけあっていくことが、重要になってきますよね。

今後の記念事業について

毛利聡子

2014年は糸賀一雄さんの生誕100年ということで、行事も色々と予定されているそうですね。

奥山光一

はい、糸賀一雄さんの生誕100年を迎えるにあたりまして、糸賀さんの実践や考え方を今日の社会に生かし、未来に引き継いでいくために、民間の団体と滋賀県が一緒になって実行委員会を組織しまして、記念事業を実施しているところです。

今後の予定としましては、2014年3月29日(土)、30日(日)の二日間、栗東芸術文化会館さきらにおきまして、糸賀一雄生誕100年記念式典を開催することとしています。特に30日は、大江健三郎さんをお招きしまして記念講演をしていただく予定をしています。福祉関係者や障害福祉に関心のある方だけではなくて、糸賀さんのことをご存じない方にも興味をもってもらえるように、アイデアを凝らしたホームページなんかも作成しておりますので、是非ご覧いただきたいと思います。 記念事業を通じまして、この「共生社会」というものを県民の皆さんと一緒に考えていきたいと思っています。特に、将来を担う若い人たちにとって「生きる道しるべ」を見つけていただけるような、そんなイベントにできればなと思っております。

毛利聡子

そうですね。障害のあるとかないとか関係なく、意識することなく誰もが暮らしやすい社会というのが理想ですよね。そのためには決して私たちも他人事ではありませんので、ひとりひとりが何ができるのか、考えていきたいなと思いました。 奥山さん今日はどうもありがとうございました。

奥山光一

ありがとうございました。

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