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小室等・北岡賢剛『音楽と福祉現場の出会いとこれから』(2/2)

  • 小室 等フォークシンガー
  • 北岡 賢剛滋賀県社会福祉事業団 理事長
小室等・北岡賢剛『音楽と福祉現場の出会いとこれから』(2/2)

自身のソロ・コンサートの他、様々なジャンルのミュージシャンとのコラボレーションや、「六文銭’09」や、さがゆきとの「ロニセラ」、こむろゆいとの「Lagniappe」などユニットでの活動を行う小室さん。福祉施設などのおける音楽活動にも務め、1980年代後半以降、長年にわたり滋賀県での活動を継続されています。昨年2012年は、栗東文化会館さきらにて開催された糸賀一雄記念賞第十一回音楽祭にて総合プロデュースも務められました。番組では、滋賀県社会福祉事業団理事長 北岡賢剛さんとの出会いのエピソードを皮切りに活動を振り返りながら、糸賀一雄生誕100年県民コンサートへの意気込みも語っていただきます。

障害のある人たちと音楽をすること

アサダワタル

前回、最後に糸賀一雄記念賞音楽祭という名前が出たんですけれども、この音楽祭、昨年で11回、今年で12回目ということで、共に総合プロデューサーとして、小室等さんが務められるとお聞きしています。まず、2012年11月に行われた第11回、率直にお聞きしたいんですけれども、プロデュースされてどうでしたか?

小室等

まぁ結論的に言えば、面白かった、としか言いようがないんですけれども(笑)、北岡さんの方からそういうお話を戴いたときには、最初は僕はちょっと腰が引けたんですね。

アサダワタル

どの辺りがちょっと「どうしようかな」と?

小室等

それは、北岡さんのおかげで障害者のことや障害者の人たちが暮らす現場とか、ずいぶん見せていただいて、そしてそういう中から“表現をする”というような現場、仕事も見せていただいて。絵を描いたりとかそういうことがとてもユニークで面白くて、その辺の下手なプロと呼ばれるアーティストよりはずっと凄いなって思えるものがあった。僕なんかが言うのは口幅ったいんですけれども。で、こと音楽の方はね、どこかね、いわば健常者の側がサポートして、枠だけを作ってその鋳型のなかで、障害の人がやった形に見えるようにして(観客に)聴いて頂くっていうような感じが強かったんですよ。なので、それを打破するっていうのは、しかも、その障害をもった人たちがね、主体的に自分の音楽の行為をするっていうことがね、僕が触れるような所じゃないんじゃないかと。僕に理解があったとしてもできないんじゃないか、っていう気持ちがあったんですよ。

アサダワタル

美術に関しては、一人で自分の情動に任せて描いていくみたいなことがあると思うんですけれども、音楽の場合は、例えばバンドとかもそうですけど、何人か集団で音楽をしていくみたいな状況になったときに、どうやってそれぞれの自発性といいますか、自分たちが本当にやりたい音を出して歌ったりとか、楽器を演奏したりしてるかってところって、観る側としても、まさに小室さんが仰ったような、ちょっとした疑問を感じるときも確かにあるのかなと思うんですけれども。

小室等

その疑問っていうのは何かっていうとね、この間経験させて頂いて思ったのは、つまり、もしも僕を健常者という側に入れられるのであれば、健常者の僕が持っている出来上がりの想定図があって、それは障害をもった人がこのようになった表現がいいのだろうと思う限り…、それはね、実現しないんだよ。

アサダワタル

なるほど、その前提である限りというのは、もうその思考から逃げることができないんですかね。

ありのままの表現と出会う瞬間

小室等

つまりね、みんな、表現衝動はある、と僕は今思っている。で、表現衝動があって、それを具体的に表せる人もいれば、表現衝動があるにも関わらず中に閉じこもったままの人もいるのかもしれないけれども、すべてそれは、ダンスパフォーマンスとかそういう肉体表現する人もいれば、声を発する人もいれば、何かを叩きたい人もいればね。その人たちがしたいに任せて出てきたものは、絶対に人を「うわぁっ」て思わせる。

北岡賢剛

小室さんに去年、コンサートのプロデュースをやってもらって、こんなに演出をしないのかって。それは小室さんが今言ってくれたようなことを挑戦した感じがすごくあって。 ゲストで見えたパーカッションの高良久美子さんも幕間に出てくるだけで、強引に(障害者のある人たちと)コラボレーションしていこうというような仕掛けにならなかったでしょ。

アサダワタル

ステージが一つずつの間の幕間といいますか、そこだけでゲストの高良久美子さんが演奏されるっていう、あの演出があったわけですけれども。

北岡賢剛

これまでの障害のある人たちのステージって、どうやってコラボレーションするかっていう、そのコラボレーションのために、みんなが相当エネルギーを費やしてきたけれども、あのコンサートは、本当に自然に任せておくと。コラボレーションしたきゃすればいいし、それぞれに終わったら終わってもいいじゃないかっていう潔さがね、すごくあのコンサートにはあると思った。で、本当に小室さん自身が障害のある人たちの表現にリスペクトを持ってるんだなっていうことが、すごく伝わってくるコンサートでしたね。

小室等

素晴らしい。本当に。僕も今日ワークショップを一つ見させて頂いて来たんですけれども、いやぁ、この間の音楽祭を体験させてもらったから余計それが見えてくるんだけれども、いやぁ、もう、全員面白いね。本当に素晴らしいね。

アサダワタル

ありのままの自分の中に閉じこもっているものを出すっていうことって、実は凄いことなんですね。

小室等

それから、体験させてもらうとね、(ありのままの自分を)出しているように見えないけれども、出しているんだっていうのが見えて、分かってくるんだよねぇ。

アサダワタル

障害がある方で舞台に立ったときに、明らかに目立つ方いるじゃないですか。ずっと歌ってるとか、舞台中をずっと動いてるとか。でも、何かちょっとだけ足のつま先ぐらいしか動かさない、みたいな人もいますよね。

小室等

何もしないでうずくまってる人を見て、「そんな無理矢理うずくまらせて…」って僕らつい思ってしまうけどね…。うずくまって“表現”してるんだよね、それがね。

北岡賢剛

ふふふ。

小室等

だっていなくならないんだもん、そこから。

北岡賢剛

そういう人たちの存在っていうか、障害のあることを小室さんのように感じることが、実は自分たちのなかに色々と“障害”っていう問題があって、そこから自分自身が解放されていくっていうか。そのツールとして、音楽とか美術がすごく効果的っていうか、僕ら自身がそこに気付くためのツールとしては、とても大事なものだなと思うんですよね。よく言うんですけど、障害のある人たちは福祉サービスを利用するためだけに生まれてきたわけじゃもちろんなくて、そこに対して彼らの面白さとか値打ちというかね、そういうものを是非色んな角度で、色んな場面で見ていくと、本当にかけがえのない人たちだなって思うんですよね。

小室等

値打ちですよね。

北岡賢剛

これは別にヨイショしてるわけじゃなくて、ずっと一緒にいると、そのことを感じていくことがあってですね、糸賀一雄さんが「この子らを世の光に」って言ったことは、まさにそういうことだと思うんですよね。その光にするための、僕らの色んな取組みが、試されてるっていうか。

小室等

「この子らを」ね、「この子らに」じゃなくてね。

県民参加コンサート

アサダワタル

糸賀一雄さんの生誕100年ということで、2014年3月29日が栗東芸術文化会館さきらの大ホールで、県民参加パフォーマンスライブが開催されるんですね。こちらも小室さんが色々と関わっておられるところで、こちらは高齢者の方とかジュニアオーケストラとかの参加があり、色んな状況のコミュニケーションが生まれると思うんですけれども、今どんな感じで進んでいるんですか?

小室等

僕じゃない人がやるんであれば、本当に興味深いんだけど、自分が…ちょっと…腰は引けるんですけど(笑)。

アサダワタル

ははは。

小室等

ただね、そういう方々が出てきて、「楽しかった!」ってみんな全員が思えるようなものになるためにどうしたらいいのかなぁ、とは思ってるんですよ。

北岡賢剛

去年の音楽祭でコーラスっていうのがあって、障害をもつ人たちがみんなでコーラスをするっていう。コーラスって比較的地味でしょ、見た感じが。ところが小室さんに言わせると、「コーラス歌ってる人の真ん中で聴いてごらん。とてもいいんだよ」って話があったでしょ。「だから北岡、ちゃんとPA(音響)を万全にしなきゃいけない」って。

アサダワタル

難しいですよね。音響もしっかり整えて、聴く環境をどうやって作るかっていうことによって、先ほど言ってた“表現”が出てるっていう部分をちゃんと伝える、みたいな。

小室等

生き生き感がね。カラオケもやってもらおうと思ってるんですよ。生演奏でプロのトップレベルのミュージシャンに演奏してもらって、『青い山脈』を歌っていただくとかね。そういうことをやろうと思ってます。

アサダワタル

それは楽しみですね。いま手元に、小室さんが総合プロデューサーを務められる第12回の音楽祭チラシがありまして、ここでもゲストミュージシャンの出演が決まっているということで、小室さんから少しご紹介頂きたいんですけれども。

小室等

去年に引き続いて高良久美子さんという素晴らしいパーカッショニストが来てくれるんですけれども、その他に、坂田明さん、サクソフォーンですね。

アサダワタル

おお。

小室等

そしてハーモニカ、ブルースハープの名手ですけれども、八木のぶおさんに来て頂いて、今回コラボレーションを。どことどうコラボレーションしてもらうのか、まだ分からないんですけれども、できたらいいなと思ってるんですけれどもね。

アサダワタル

今回改めて昨年からずっと色んな福祉現場、滋賀県7カ所のワークショップの現場を回られてるんですけれども、変化みたいなものって見えてきてる感じですか?それとも逆に変化がないから凄いっていうこともあるのかもしれないですけれども、いかがですか?

小室等

変化してるかどうか、僕には分かりませんけれども、明らかに僕が変化してますね。

アサダワタル

あぁ、小室さんご自身が。それはすごく面白いですね。

北岡賢剛

よかったね、小室さん(笑)。

小室等

ははは、おかげさまで。

北岡賢剛

小室さん、この話を最初にお誘いしたとき、僕、小室さんに言ったんですよ。「小室さんのためにも、この総合プロデュースは受けた方がいいんじゃないか」って。

アサダワタル

すごい頼み方ですね、それ(笑)。

小室等

脅されたんですけれどもね(笑)。

アサダワタル

ははは。

小室等

たぶん坂田明さんも八木のぶおさんも、絶対にぶっ飛ぶと思う。高良さんはもうハマってますからね、あの人たちとコラボレーションしたらね、自分らがいかに敵わない存在かっていうのが分かる。だからね、楽しみ。

アサダワタル

ということで、音楽家の小室等さんと、滋賀県社会福祉事業団 理事長の北岡賢剛さんに、今回お越し頂きました。二回に渡ってどうもありがとうございました。

北岡賢剛

ありがとうございました。

小室等

失礼しました。

※1 糸賀一雄記念賞音楽祭

びわ湖を囲むように県内7つの場所で表現活動を行う障害のある人とアーティストが、観客と一体となって表現することの喜びを分かち合う、音楽とダンスのお祭り。糸賀一雄氏の心を受け継ぎ、障害者やその家族が安心して生活できる福祉社会の実現に寄与することを目的として、障害者福祉の分野で顕著な活躍をされている個人および団体に対して授与される「糸賀一雄記念賞」の授与式とともにこれまで全十一回開催されている。第十二回は2013年11月10日(日)に栗東文化会館さきらにて開催予定。

※2 県民参加パフォーマンスライブ

滋賀県内で表現活動を行ってきた障害者や高齢者のグループ、ジュニアオーケストラ、プロのダンサーや音楽家が一体となり、舞台作品を創作・発表。2014年3月29日(土)に栗東文化会館さきらにて開催予定。

小室等フォークシンガー

1943年東京生まれ。1968年グループ「六文銭」を結成。1971年第2回世界歌謡祭にて「出発の歌」(上條恒彦と六文銭)でグランプリを獲得。1975年泉谷しげる、井上陽水、吉田拓郎と「フォーライフレコード」を設立。
現在は、自身のコンサートを中心に活動するなか、谷川賢作(pf.)とのセッション、さがゆき(vo.)との「ロニセラ」、娘であるこむろゆい(vo.)との「Lagniappe」、「六文銭 '09」(小室等、及川恒平、四角佳子、こむろゆい)などのユニットでライブ活動を行っている。他のジャンルのミュージシャンとのコラボレーションやイベントプロデュースも多数あり、テレビドラマ(NHK金曜時代劇「蝉しぐれ」、TBS「高原へいらっしゃい」「遠い国から来た男」他)、映画(ドキュメンタリー「ナージャの村」他)、舞台(ミュージカル「スパイ物語」、他)などに音楽を提供するなど幅広い活動を行っている。

小室等
北岡賢剛滋賀県社会福祉事業団 理事長

1958年福岡県生まれ。筑波大大学院障害児教育研究科終了後、1985年から滋賀県甲賀市の知的障害者施設「信楽青年寮」のスタッフ〜副寮長を経て、社会福祉法人「オープンスペースれがーと」理事長。そして2001年に滋賀県社会福祉事業団企画事業部部長、2007年に理事長に就任。障害のある方が地域で当たり前に暮らせるシステムづくりを進め、また「バリアフリー映画祭」や近江八幡市「ボーダレス・アートミュージアムNO-MA」の企画運営など、福祉と様々な芸術文化を繋ぐ活動も精力的に展開している。

北岡賢剛
パーソナリティ アサダワタル

1979年大阪生まれ。日常編集家。公私の狭間、異分野間を漂泊しながら、既存の価値観を再編集する表現を、音楽、文章、プロジェクトを通じて創作・提案。2002 年、バンド 越後屋のドラマーとして、くるり主宰レーベル「NMR」より2枚のCDをリリース。その後、音楽を主体に各地でソロライブ、プロジェクト、ワークショップを展開しつつ、2013年、ドラムを担当するSjQ++にて、アルスエレクトロニカ準グランプリ受賞。著書に『住み開き 家から始めるコミュニティ』(筑摩書房)、『アール・ブリュット アート 日本』(平凡社、編著)『編集進化論 editするのは誰か』(フィルムアート社、共著)等。『ソトコト』や『マガジン航』等で連載。神戸女学院非常勤講師。

アサダワタル

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