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小山田徹『対話をし続けること 共有空間の獲得』(1/3)

  • 小山田 徹美術家・京都市立芸術大学 准教授
小山田徹『対話をし続けること 共有空間の獲得』(1/3)

小山田さんは活動テーマは「わかりあえない他者同士がいかにしてコミュニケーションしていくか」。1992年にダムタイプの作品「S/N」にて、仲間の美術家 古橋悌二氏のHIV感染の事実をカミングアウト。当時、日本社会の中で、「同性愛」や「エイズ」に関する議論がほぼタブーであった時代に、先進的に、医療分野からではなく、アートという分野から、この問題に関する啓発普及活動を進めて行きます。そして、舞台とともに、京都にて数々のコミュニティスペースを立ち上げ、そこに、様々な福祉に関わる当事者や支援者、医療関係者、社会活動家などが集まり、アートを「対話」のきっかけにし、普段の日常生活を過ごす我々が、様々な問題にいかにして「当事者性」を獲得するかといった議論を重ねていきます。小山田さんの活動から“福祉”という領域をどのように切り開いて行くのか、糸賀思想とのつながりは?どうぞお楽しみください。

共有空間の獲得

アサダワタル

今日は様々なお話を幅広くしていただこうと思うんですが、まずは自己紹介も含めて特に「共有空間」について、事例など交えてご紹介いただきたいと思います。

小山田徹

主な活動というのは「共有空間の獲得」をテーマにしてやっています。共有空間というのは簡単にいうと人が一人いればその周りにある関係性を含めた時間と場、そういうものの総体として、もう共有空間は派生しているんだけど、それを意識的に共有空間として捉えることで多くの人々が多様な関係性を作って多様な交わりをする。多様な社会をつくっていけるということを目的として、それを美術の立場からアプローチして、実現を試みるということが私自身の活動の主なポイントです。

アサダワタル

最近小山田さんが行かれている地域であるとか、そこで事例をぜひ教えてください。

小山田徹

例えば学生たちとは大学の中でのコミュニティの作り方、自分たちで学ぶところは自分たちで作ろうということで小屋を制作したり。あるいは家庭を含めた生活の中で子供たちが集まる場所とか、生活しながら働ける場所、例えばカフェとかね、それを地域の中で試みる。人が集まりやすい装置を見つけて、それは場合によっては屋台とか、たき火とか、食事とか、音楽とか、様々な要素があると思うんだけど、そういうものを使って、地域のコミュニティの再生に関与する形で活動してます。特に最近は自分たちの周りで起こった大きな出来事として、2年半前に東日本大震災がありましたよね。それ以来私自身は個人的な関係から宮城県の女川町の方とつながりがあって、そこの地域に入って地域の人と一緒に色んな企画をやっています。これから一度崩れてしまったコミュニティをもう一回再生しなきゃいけないんだけど、それも「押し付けられるコミュニティ」の姿として再生していくというのはおかしいんですよね。こういう機会を逆に新たに獲得できる自分たちの未来の社会、それをつくるために思考する形に変えなくては新しい再生はできないんじゃないかと思うんですよ。ですからそんなことを意識しながら、時間のかかる方法なんだけど、対話を中心としたゆっくり進める形で今やっているんです。

女川でやってるのは個人の顔が見える形の交流からスタートしようということですね。たまたま向こうで偶然知り合いだった方が家も流されて、店舗も流されて、その方をお見舞いすることがきっかっけで関係が始まったんですよ。たまたま顔の見える知り合いがいるだけで震災に対するリアリティが変わるんですよね。多くの個人が社会全体を支えるような支援ができる訳でもなくて、個人ができることって多様なつながりを増やすという方法が一番いいんじゃないかと。こちらで10人の人間が最低限向こうで顔の見える10人の人間とつながるとね、こっちで台風の被害があると向こうの方が心配のメールをくれる。なんかそういう関係が持続していくこと、そういう関係ができていくのが、東日本だけではなくてこちらでの生活の未来を考える事につながるんじゃないかと思うんですよ。個人の顔が見える関係がどうやったら作れるのか、様々なものを持ち込んでやろうと思っています。例えば、東北にいると毎日たき火をしながら酒を飲む事になるんですよ。

人々をつなぐたき火

アサダワタル

たき火ですか。

小山田徹

たき火で生き延びた方々なんですよね。震災直後からね。でも今は仮設住宅に入って個別住宅になると火気厳禁なんでたき火ができなくなった。すると途端に皆さんの意思疎通が途絶えたらしいんですよ。

アサダワタル

皆さんが集まるきっかけが失われていってると。

小山田徹

避難所生活の時は、グランドとかで毎日たき火をしながら、そこが誰がいうともなく様々な会話をしたり決め事をする場所として機能してスムーズに様々な事が決まってたんだけどね。やっぱり途切れてしまうと難しい。「たき火いいよな」って形でたき火をなんとか復活出来ないかという事で、迎え火のプロジェクトをやってみようとなったんです。

震災1年めの夏からその企画が始まって8月13日に毎年夜7時の段階では、女川の町ではほぼ全体の家庭の方々がちっちゃな火をともすのを目的としたプロジェクトがスタートして今年でもう2回目。向こうの方々の新しい風習として定着するような形になってきました。向こうの方々はこれを100年続けたいと。それをなぜ始めたのかと聞かれると必ず震災の話が出きる。

それをやってみたら、ほんとうにたき火の力って凄くて……。たき火ってなんかこう隣り合った人が気軽に参加出来るじゃないですか。

アサダワタル

自己紹介なんかしないで、普通の日常の会話からいきなり入れる感じがありますよね。

小山田徹

「寒いねー」なんていいながら(笑)

アサダワタル

相手が誰かなんてあんまり関係ないですよね(笑)

小山田徹

火の前には居やすいし黙っててもいやすいししゃべっても大丈夫だし。

アサダワタル

なんかお互いが居たいようにそこに居れる感じの場が出来上がりますよね。

小山田徹

特に今回の迎え火は小さい火をたくさん使うという手法をとったんですよ。大きい火じゃなくて小さい火をたくさん。それが実は凄く有効で多様なたき火の仕方が存在するし多様な人たちの集まりが実現出来る。しかも多様性もはしごできるんですよね。

アサダワタル

色んな火を見ていけますよね。それぞれがどういう火をどういう思いを込めて燃やしているのか。

小山田徹

たき火をしていると分かるんだけど、たき火マスターっていうのができちゃうんですよ。薪の積み方とか火の起こし方とかそれぞれやり方があるんで。それぞれ個性のあるたき火があって、外部からきたり偶然出会った方々はひとしきり話が終わったら次のたき火に行くとか。いろいろ混じる事ができる。一つのたき火だと大きな中心性を帯びたイデオロギーめいた、まぁそれも気持ちいいんだけどちょっと危険ですよね。フルスイングでイベントやるとヘトヘトになるんで、力が抜けた状態で持続するっていうのはどうやったらできるかなと。

アサダワタル

力の抜け方っていうのは大事ですよね。持続する上で。

小山田徹

美術っていうのでやってる訳じゃなくて、対話の手法の中に美術をちょっと入れた感じなんですが。対話の結果出てきたものが美術ではなかったりするんですよね。でも入り口が美術的なアプローチでやってると、関係者もそのやり方に引き込まれていって、様々な生活の他の分野と混ざることになるので、そういう状態でコミュニティとか共有空間が成り立つ。しかも獲得感に寄与する。そういうところに美術というものが存在出来たらいいのになぁと思います。

アサダワタル

女川の小さい火を地元の方々囲む事を、そしてそこから対話を、美術を入り口にしながらやっていく、そういう風に美術を一つのきっかけにしていく。次回以降、美術家である小山田さんが美術というものを転用していく中で、色んな人たちが集まれるようになっていく、そういう原体験になったというエピソードを話ししていただきたいと思います。今日はどうもありがとうございました。

小山田徹

ありがとうございました。

※1 迎え火のプロジェクト

このページに詳しい記述がありますので、こちらをご参照ください。
http://www.nettam.jp/topics/fukkou/06/

小山田徹美術家・京都市立芸術大学准教授

1961年鹿児島に生まれる。京都市立芸術大学日本画科卒業。84年、大学在学中に友人たちとパフォーマンスグループ「ダムタイプ」を結成。ダムタイプの活動と平行して90年から、さまざまな共有空間の開発を始め、コミュニティセンター「アートスケープ」「ウィークエンドカフェ」などの企画をおこなうほか、コミュニティカフェである「Bazaar Cafe」の立ち上げに参加。日本洞窟学会会員。

小山田徹
パーソナリティ アサダワタル

1979年大阪生まれ。日常編集家。公私の狭間、異分野間を漂泊しながら、既存の価値観を再編集する表現を、音楽、文章、プロジェクトを通じて創作・提案。2002 年、バンド 越後屋のドラマーとして、くるり主宰レーベル「NMR」より2枚のCDをリリース。その後、音楽を主体に各地でソロライブ、プロジェクト、ワークショップを展開しつつ、2013年、ドラムを担当するSjQ++にて、アルスエレクトロニカ準グランプリ受賞。著書に『住み開き 家から始めるコミュニティ』(筑摩書房)、『アール・ブリュット アート 日本』(平凡社、編著)『編集進化論 editするのは誰か』(フィルムアート社、共著)等。『ソトコト』や『マガジン航』等で連載。神戸女学院非常勤講師。

アサダワタル

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